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その場所をデザインするということ。その場所に住むということ

2020年も大変暑い日が続きましたね。

ところで、実は50年前と気温はほとんど変化していないことをご存じでしたか?

 

もちろん観測点は丘の上の環境状況が安定している場所にあるので、「気温」は変わってなくても、コンクリートジャングルの蓄熱効果やアスファルト路面の照り返し、車や機械の排ガス量は跳ね上がっているでしょうから、「体感温度」はだいぶ変わっているとは思います。しかし、地球環境そのものは変わってなかったんです。

今月はその「体感」から考える家づくりについて、設計士さんにお話ししてもらいました。

   

 

「数値」よりも「感覚」を信じた家づくりを

 

家づくりにおいて、この「体感温度」という考え方がとても重要になってきます。

50年前と変わっていないのになぜテレビでもなんでも口癖のように「昔はこんなに暑くなかった」と言っているのか……。

最大の原因は「温度差」による「体感温度」です。

たとえば、クーラーをガンガン効かせた部屋からいきなり外に出たら、猛暑日でなくとも暑く感じます。人間の体は環境に適応するようにできていますから、私たちが感じているのは気温そのものではなくて、温度の「差」なんです。数値ではなく「感覚」です。

 

家もそうです。

本当に大切なのは、耐震等級や外皮熱貫流率がいくつだとか、材料が何だとかではなく、その先にある「空間の心地良さ」です。性能の数値も、材料の成分も、何もかも、すべては住む人が心地良いと感じるための手段であり目的ではありません。

決して性能を否定しているのでなく、その先にある目的がしっかりとなければ、性能は机上の数字遊びになってしまうということです。

 

つまり家づくりで大切なことは、どういう性能の箱をつくるのかではなく「どう感じる環境をつくるか」ということです。それは家をつくるという発想ではなく、「暮らしをつくる」という発想で導かれます。

  

 

 

日本家屋にならう、自然とともに快適に暮らす方法

 

そう考えると、先人の知恵、日本家屋はよく考えられていました。

その場所を照らす日差し。

時間によって形を変える日陰。

春夏秋冬ごとの風の流れ。

そして、家の外と内をゆるやかにつないでいく「間」という考え方が日本住宅の根源です。

冬は暖かい日差しを呼び込み、夏は強い日差しを遮り、窓を開ければ家全体に風が流れ、障子を開ければ絵画のように草木が映る。そうやって自然と共生し、自然を利用し、自分たちにとって快適な住環境を創ってきました。


以前ある設計コンペで「十二ひとえの家」という家屋を設計し、最優秀賞をいただきました。

家を日本古来の女性の装束に見立て、“寒ければ着て、暑ければ脱げる”ように設計しました。玄関扉をはじめ、障子やふすまや引き戸を何枚も何枚も設置して、冬は全部閉めて部屋の真ん中で寝て、夏は全部開け放って別荘のような空間が広がる家。


なぜ高い評価を頂けたのか。あの頃は思いの強さだけで前しか見ずに突っ走っていましたが、今なら俯瞰的によくわかります。

昔の人は、科学的な数値ではわかっていなくても「体感」でわかっていたんですね。

そしてそれが正解だと思います。


 

 

家づくりで追求したい、本能が求める「心地よさ」

 

私はよく、工事現場で猫を探します。

猫は、その場所の一番気持ちの良い場所で寝ているんです。冬なら陽だまりで、夏なら日陰で。

昔ながらの大工さんなんかもそれに近くて、大工さんが昼休みに昼寝しているところをチェックして、「あ、こっちのほうが気持ち良いんだ!」なんて感じで、その場で設計を変えてしまってその大工さんに怒られることもありました。

 

しかし、「住む」って、「生きる」って、そういうことだと思うのです。

この場所で、どこが日当たり良くて、どこが風が抜けて、どこが居心地よいのか――「感覚」ですから、その時の体調や気分でも変わります。計算で出した数値に比べればとても曖昧です。

でも、私たちは人間で、家はその人間のための空間ですから、やはり「曖昧」でもよいと、「感覚」を大事にすること が家にとっては正解だと、何度考えてもやはりそう思うのです。